traumaとまでは行かないけど…。

夢見心地。

 私自身、初のPDAZaurus PI-5000でした。PI-5000には当時、最高水準の日本語手書き認識機能が搭載され、また、オプションのモデムを使えばニフティサーブへのアクセスも可能であり、さらに、データベースアプリなどがカードで供給されていて、まさに夢のようなデバイスでした。PI-5000では、とにかく色んなものをがしがし入力しては、PCと同期させたりして活用しましたが、今思えば、今どきの超高機能PDAよりも安定していたような気がします。少なくても、いきなりデータが吹っ飛んだり、デバイスが初期化されることは皆無でしたし…。

 ところが、使い込むほどに「手書き入力」にストレスを感じるようになってきたのです。日本最高水準の手書き入力でそう感じるのだから…という思いもあってか、この時点で私には「手書きは嫌だ」という思いが刷り込まれたのかもしれません。その後購入した手書き入力デバイスでは、ほとんど全くと言って良いほど、手書き入力をしなくなりましたから…。その後はしばらく、紙のシステム手帳に凝っていました。様々なリフィルを綴じ込んで、いつでも持ち歩き、何か書き込んでは悦に入っていました。また、文房具屋さんで手帳に挟むノートやカレンダーを選ぶのも楽しみでした。

 PI-5000の次のPDAを手に入れた経緯はひょんなことからでした。当時、ニフティサーブThinkPad 220の会議室では、常連によるオフが毎週のように開かれており、私も折を見ては秋葉原に繰り出していました。ある時のオフで、コレを使ってみませんか?と渡されたのがHP 200LXでした。ThinkPad 220ユーザには、220を200LXの「母艦」として活用している人も多く、オフでも数多くの100/200LXを見かけていました。200LXについては、画面は狭いけど基本的にはDOSマシンであり多くのDOS/V用ソフトが使えることや、内蔵のPIMが秀逸であることくらいは知っていましたが、特段興味は持っていませんでした。しかし、仲間が格安で譲ってくれるというので、使ってみることにしたのです。

 LXに詳しい仲間が周りにたくさんいてくれたので、発生する疑問や悩みはすぐに解消され、いつのまにか、客先での打合せにも200LXを使うようなるまでになっていました。全てキーボードだけで操作できる快感を、この時知ったのだと思います。その後、LXでは暗がりで画面が見えないとか、マルチタスクでないとか、インターネットが使いにくいなどの理由でほかのデバイスに目を向けていきましたが、以降、キーボードは絶対に必須であるという信念を持つに至ったのでした。

 さて、今どきのPDAはほとんど全てが手書き入力ですが、過去の経験からどうしてもメインのPDAに据える気持ちになりません。もちろん、手書き認識の技術は進化はしているのでしょうけれど、ダメな感じなのです。また、私は字を書く時、柔らかい紙面に柔らかい鉛筆(B以上)で強めに書くのが好みで、鉛筆が削れていく感じが好きなのですが、PDAはどうしても堅いパネルに堅いスタイラスで書くため、書き味にストレスを感じます。手書き入力のパネルは同時に画面でもありますから、ここを柔らかくするというのは無理なことでしょう。そういう意味では、画面とは別に柔らかめの入力パネルを搭載したPDAがあれば、手書き入力が快適になるかもしれませんが、それでも、PDAという道具として考えれば、キーボードマシンを使いたいと思います。

 今は、目的に応じてPDAを使い分けていますから、入力をしない利用方法ならCLIEでもPocket PCでも使いたいソフトとハードを選ぶことができます。しかし入力作業に使いたいPDAはまだ決定版が見つかりません。jornada 720やsigmarion IIIは少ない選択肢の中で理想に近いものですが、まだまだ改善して欲しいところがたくさんあります。今後、この手のPDAが数多く発売されるような状況ではありませんが、それでも、さらに使いやすいキーボードマシンの登場を期待しています。