未体験ゾーン。

 以前にも似た状況はありましたが、その頃はまだ国民にも余裕がある人が多くいました。
しかし今回は国民(の多く)に全く余裕がありません。
そんな中で行われた選挙で、ついに自民党衆議院で第一党ではなくなり、民主党単独過半数を獲得しました。

 政権交代です。

 選挙速報番組で民主党の圧勝が伝えられると、テレビに出ている人達も、ネット上でも、未体験ゾーンに対する怖さや緊張が漂いはじめました。特に日本人は変わったことを敬遠する国民性なので、今回の状況には驚いているでしょう。
しかし想像するに、勝った民主党が一番、未体験ゾーンに足を踏み入れることに対して緊張感を持っていると思います。
せっかくですから、これからも良い緊張感は持ち続けて欲しいと思います。


 今回の流れと結果について個人的に思うのは、改革や積極的な政策支持というより、むしろ、現実逃避に近い思考で投票先を決めたのではないか、ということです。
小中高大などの学校に行く子供を持つサラリーマンは、とにかく目先のニンジンに「これは目先だけのものだ」と分かっていながら食い付かざるを得ない人が多かったと思います。
政権には国家作りや外交という大きな仕事があるし、長い目で見た生活の質的向上を考えなければならないことを頭ではわかっていても、今はとにかく目先だ!と。
そういう選択をした人は少なくないと思います。


 この十年近くはサラリーマンが煮え湯を飲まされてきました。
所得税定率減税が廃止され、厚生年金の保険料率は上げ続けられ、それに対する昇給は追いつかず、今でも実質的な減給が続いている人が多いはずです。
細かいところでは資格手当、出張費、昼食(補助)費なども削られています。
その結果、サラリーマンの昼食は手弁当、コンビニのカップラーメンなどが増えて、飲み物も水筒持参が当たり前になりました。

 自民党は、まず社会全体の構造を変え、企業収益を向上させる。その結果として社員末端を潤す、というような政策を取ってきましたが、結果は企業収益が改善しても社員末端が潤うことはなく、それどころか企業が正社員を増やさずに切りやすい形態の社員を増やしたため、企業の都合で簡単に路頭に迷う人が続出しました。
正社員もいわゆる本俸は上がらず一時金の割合が高い給与制度により、企業業績がちょっとでも悪くなるとボーナスカットによって簡単に年収が下がるようになりました。

 そこに中学生までの子ども一人あたり月に2.6万円!高校の授業料を実質無料化!
と言われたら、後先考えず反射的に飛びつきます。

 多少の後ろめたさがあっても、子どもが仕上がって、税金などを十分に支払えるようになるまでちょっと猶予をくださいね、という心持ちでしょう。

 今、そんな感じのサラリーマンは少なくないと思います。
そんな人達にとっては、早いところ約束したことを実行してくれ!と。
そういうところだと思います。